合併、会社分割、株式交換、株式移転においては、税務上、資産・負債の移転を時価で行い(パーチェス法)、評価損益に課税されることが原則になっています。
しかし、一定の要件を満たした場合は、特例として、資産・負債の移転を簿価で行い(持分プーリング法)、評価損益を計上せずに課税を繰り延べすることが可能です。
この特例を税制適格組織再編といい、M&Aやグループ組織再編時には、考慮すべき重要な事項です。
以下、スキーム毎の税制適格要件の簡易的な一覧です。
【前提】
1 株式以外の資産の交付がないこと
2 分割型分割の場合、非按分型分割に該当しないこと
合併や会社分割、株式交換、株式移転の場合には、その再編が税制適格か否かということは、取得原価やのれんの取り扱いに大きな影響を与える場合がありますので考慮が必要です。
繰越欠損金の引継ぎの可否にも注意が必要で、これは買収スキームの選択へも大きな影響を与えます。
M&Aの手法のうち、株式譲渡においては、買い手企業にかかる税金は基本的には発生しませんが、事業譲渡の場合は、課税対象資産の買い取りにおいては消費税、不動産取得税、不動産の登録免許税を考慮する必要があります。
M&Aの買い手が上場企業の場合、当該買収によって株価に与える影響は慎重に検討する必要があります。
新株を発行して買収対価とするか?借入で買収するか?
買収が投資家の投資行動に与える影響など様々なことを考慮する必要があります。
M&Aで買い手企業に買収資金力があれば、現金を対価とした買収が可能となりますが、そうでない場合は、対価として現金の必要のない、株式交換や合併などの株式を対価としたスキームを利用します。ただ、売り手が受け取る対価が株式の場合、当該株式によるキャピタルゲインの可能性や流動性が重要になります。
M&A買収対象企業の株主が対価として現金を望んでいる場合には、株式譲渡を利用します。新株引受、事業譲渡も対価は現金であるが、その場合の対価は、買収対象企業の株主ではなく、買収対象企業に支払われることになります。
買収対象企業の株主が、対価として、買い手企業の株式を望んでいる場合は、株式交換、合併、吸収分割を利用します。
M&Aの対価が現金か否か、対価の受け手が、対象企業の株主か、対象企業なのかによって手法が違ってきます。
M&Aの買収対象企業(事業)が債務超過に陥っている場合や、簿外債務のリスクがある場合など、引き継ぎたいものだけを引き継ぐことができる事業譲渡を利用します。
M&Aにより子会社化を目指す場合、株式交換、株式譲渡、新株引受を利用します。
そうではなく対等な関係を重視する場合は、株式移転を活用した持株会社制か、合併を利用します。
M&A後の統合を急がず、当面の間は、買収対象会社を存続させたいのであれば、株式譲渡、株式交換などを利用することになります。ただしこれらの場合統合によるシナジーが犠牲になる可能性を考慮する必要があります。反対にM&A後の統合を急ぎ、シナジー効果をいち早く出したい場合は、事業譲渡、合併などを選択することになります。