以下、上記各手法の特徴等の比較です。
通常、実務的には、上記3つの手法のうち、一つに絞り込み企業価値を算定するのではありません。3つの手法の評価額にバラツキがあり、考え方も違うため、複数の手法で算定するほか、算定式に盛り込んだ以外の様々な要素、状況を加味しながら、評価額は決定されます。
以下、上記各手法の特徴等の比較です。
通常、実務的には、上記3つの手法のうち、一つに絞り込み企業価値を算定するのではありません。3つの手法の評価額にバラツキがあり、考え方も違うため、複数の手法で算定するほか、算定式に盛り込んだ以外の様々な要素、状況を加味しながら、評価額は決定されます。
類似会社比準法とは、評価対象会社に類似した上場企業の株価などの財務数値を基礎として、評価対象会社の株主価値を算定する方法です。
四季報、アナリストレポート、インターネットなどの様々な情報ソースを利用して、事業ポートフォリオを重視しつつ類似の上場企業をリストアップします。
以下、よく利用される倍率をその特徴です。
上記で選択した倍率を基に、評価対象企業の株主価値を算出します。この時、評価対象会社が非上場企業であるための非流動性ディスカウント(通常△20%~30%)、経営権の移転を伴う場合のコントロールプレミアム(通常+20%程度)を考慮する場合があります。
時価純資産法とは、評価時点での資産の時価から負債の時価を控除して、株主価値を算定する方法です。
資産の時価評価にあたり、一般的に以下の項目が精査されます。
負債の時価評価にあたり、一般的に以下の項目が精査されます。
これに加えて、評価時点で既に簿外債務として認識されているものは、負債として認識されることになります。
Step1: 資産の時価評価 − Step2: 負債の時価評価が株主価値となります。これにのれん代に相当する部分(経常利益の3年から5年)を付加する場合もあります。
DCF法とはDiscounted Cash Flowの略語で将来発生するフリー・キャッシュ・フローを割引計算することによって事業価値を算定し、その事業価値に非事業資産の価値を加算して、有利子負債等の他人資本を差し引きすることにより株式価値を算定する方法です。
以下は、DCF法による株主価値の算定の流れを示しています。
Step1:事業計画書の作成(or 入手)
DCFは将来企業・事業が獲得するフリーキャッシュフローを前提とするため、対象企業・事業の事業計画書を入手する必要があります。対象企業・事業で事業計画書が作成されていない場合は、新たに作成する必要があります。 既に事業計画がある場合、新たに作成する場合のいずれにせよ、過去の当該企業・事業のトレンド分析や外部環境、内部環境などの様々な視点から導かれる実行可能な事業計画でなければなりません。
Step2:フリーキャッシュフローの算出
上記の事業計画書からフリーキャッシュフローを算出します。
【フリーキャッシュフローの算出方法】
Step3:割引率の決定
上記までのステップで計算されたフリーキャッシュフローは、当該企業・事業が“将来”獲得するであろうものです。ところが、当該企業・事業にかかるM&Aが行われようとしているのは、“現在”です。
したがって、将来獲得するであろうフリーキャッシュフローを現在の価値に変換する(戻す)必要があります。将来獲得するフリーキャッシュフローをどのくらいの割合で現在に戻すのか?この割合を割引率といいます。
この割引率は、自己資本コストと他人資本コストをそれぞれの構成割合に応じて加重平均した割合でWACC(ワック)と呼ばれています。
【算定式】
WACC(ワック) = k
ke = 自己資本コスト
kd = 他人資本コスト
E = 自己資本残高
D = 他人資本残高
Step4:株主価値の算定
上記の割引率が決定されれば、将来、企業・事業が獲得するフリーキャッシュフローの現在の価値が算出可能となります。 これに、下記の式にあるように、事業外資産を加算しすることでこの企業の企業価値を算定し、そこから、有利子負債を控除したものが株主価値となります。
DCF法による株主価値=将来獲得するフリーキャッシュフローの現在価値+事業外資産−有利子負債
M&Aの譲渡価格はどうのように算定されるのか?
M&Aの条件は価格だけではありませんが、この譲渡価格は最も重要な条件の一つであることは間違いありません。
これから説明する譲渡価格の算定式には公知のものが存在しているわけではありません。選択する算定式、あるいは同じ算定式でも計算者によってその結果はマチマチなのが実情です。
最終的には、売り手と買い手の合意を得た価格での契約になりますが、叩き台に価格、参考になる値がないと交渉を進めることができないばかりでなく、後々のトラブルの原因にもなりかねません。下記の図(木俣貴光「企業買収の実務プロセス」 中央経済社)の一般的なM&Aの買い手から見たM&Aの流れのでもあるように、最初の企業評価は、交渉前に行われるのが一般的です。
企業価値評価の際に、将来のフリー・キャッシュ・フローを現在価値に割り戻すときに使用する率のこと。資本コストまたは期待収益率ともよばれる。
企業価値評価のマーケット・アプローチの一つで、過去の類似のM&A取引を参考にして買収価格を算定する方法。過去に類似取引があったとして、それぞれのM&Aには個別要因があるため、あくまで参考とするのが望ましい。
企業価値評価の手法の中の株価倍率法や類似取引比較法等の評価方法の総称。他にインカム・アプローチやコスト・アプローチがある。
企業が将来生み出すフリー・キャッシュ・フローを一定の割引率で除した現在価値の総額。
総資産から負債を差し引いたもので、株主資本のこと。会社解散時に、資産を処分し債務を返済した後に残るのが純資産であるため、純資産額は解散価値とも考えられる。