事業譲渡の法務の留意点

[簡易事業譲渡・譲受]

譲受会社は、他者の事業の全部の譲受について、譲受の対価として交付する財産の帳簿価格が譲受会社の純資産の5分の1以下の場合は簡易事業譲受に該当し、株主総会決議を省略できます。

一方、譲渡会社は、事業の全部または重要な一部の譲渡について、譲渡する資産の帳簿価格が譲渡会社の総資産の5分の1を超えなければ株主総会を省略できます。

 

[略式事業譲渡・譲受]

譲受会社が譲渡会社の議決権の90%以上を所有している場合、譲渡会社の株主総会を省略できます。また譲渡会社が譲受会社の議決権の90%以上を保有している場合、譲受会社の株主総会を省略できます。ただし、略式事業譲渡・譲受の場合でも、反対株主による買取請求手続きは省略できないことに注意が必要です。

 

[譲受会社による商号の継続利用]

譲受会社が譲渡会社の商号(会社名)を譲渡後も利用する場合、譲受会社は譲渡会社の債務の弁済義務を負うことに注意が必要です。あるいは、商号を利用しない場合でも事業に関する債務を引き受ける旨の公告をしたときは債務の弁済義務を負います。

ただし、商号の利用に関して、譲渡会社の債務を負担しない旨の登記をするか、遅滞なく第三者に対し、その旨を通知した場合には債務の弁済義務は負いません。

[財産・契約上の地位の移転、許認可など]

事業譲渡は合併や会社分割のような包括継承ではないため、以下のような個別財産の所有権の移転手続及び契約上の地位の移転手続き(再契約)、許認可などの再取得が必要となります。

(1)売掛金

(2)受取手形

(3)動産

(4)不動産

(5)買掛金

(6)支払手形

(7)契約上の地位

(8)知的財産権

(9)従業員の引継ぎ

(10)許認可など(ケースbyケース)

 

[競業避止義務]

事業譲渡の場合、原則的に譲渡会社は競業避止義務を負います。会社法21条の規定によると、譲渡会社は同一市町村およびこれに隣接する市町村の区域内において20年間は同一の事業を行ってはなりません。だたし、双方合意した場合は、この限りではありません。

 

[取消権・否認権]

事業譲渡が不当に低廉な価格で行われた場合、特定の債権者への弁済目的で行われた場合、破産直前に行われた事業譲渡が債権者を害する場合などは、事業譲渡が取消、否認される場合があります。業績不振の企業から事業を譲り受ける場合は、これらのリスクを認識する必要があります。

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