M&Aにおいて、見切り・損切りは一級の戦略である場合があります。
例えば、業種は何でも良いのですが、店舗を急拡大(或いは堅調に拡大)してきたとします。
ところが、コントロールできない外部環境の変化によって、赤字店舗が増えてきたとします。
選択は4つ。
①外部環境の変化を打ち消す対策をとる。
②外部環境が好転するまで耐える。
③①と②の合わせ技
④見切り・損切り
外部環境の好転を待つ体力があるなら、①乃至③を選択することは良いと思います。
しかし、その体力がないにもかかわらず、最後に取られるのが④。
これが問題なのです。
店舗の拡大と全く同様に、店舗の縮小、売却も立派な戦略であるにもかかわらずです。
④の判断が遅れた場合、全体に負の連鎖に覆われ、再起不能(或いは相当に再起まで時間がかかる)状態になりかねません。
④をいち早く判断できた場合は、黒字店舗だけで再起を計ることが可能になります。減収にはなりますが、利益は確保できる状態で食い止めることが可能です。
機が来たら、また前回同様拡大すればいいだけのことです。
④をM&Aによる売却で行った場合は、従業員の雇用も確保されます。
絶対に、世間体やサンクコストの呪縛で判断を遅らせてはいけません。
拡大も縮小も同じ舞台の立派な堂々とした戦略ということを忘れずに!
M&Aで事業・企業を売却する場合、その時に会社にある現金・預金はどうなるでしょうか?
こちらもよくある質問です。
現金・預金の扱いは、M&Aのスキームによって異なります。
事業譲渡の場合:
事業譲渡は、事業を切り出して売却することをいいます。通常は、事業に必要な有機一体とした資産・当該事業の運営に必要な資産(人員を含む)のみを譲渡します。従って売り手・買い手が別途合意した場合を除き、通常は現金の移動はありません。買い手は、事業を取得後の運転資金を別途用意する必要があります。
株式譲渡の場合:
株式譲渡の場合は、株主の単なる変更ですので、会社に付帯している資産・負債(簿外も含む)には何らの変化も起こりません。M&Aで退任する旧社長への退職金の支払い、或いは、旧社長が会社に貸し付けていた金銭を返済する以外に、旧社長へ会社の現金を移す会計的ロジックが存在しませんので、 M&A時に会社にある現金はそのまま会社に残ることになります。
株式譲渡は、株主が変わるだけです。
M&Aの時、例えば、売り手の事務所とか店舗などが賃貸している場合の敷金や保証金は、どうなるのでしょうか?
この扱いは、M&Aのスキームによって異なります。
事業譲渡の場合:
事業譲渡の場合は、運営主体が変わりますので、新しい運営主体(買い手)と不動産賃貸契約書の再締結の必要があります。よって、敷金・保証金の入れ替えが発生します。つまり、再締結に当たり、不動産オーナー様は、売り手に敷金・保証金を返還し、新しい運営主体(買い手)が新たに敷金・保証金を入れることになります。買い手様は、譲渡代金とは別に敷金・保証金を準備する必要があります。
株式譲渡の場合:
株式譲渡の場合は、株式が新たな会社オーナーに譲渡されるだけですので、事業の
運営主体に変化はありません。ただ、多くの中小企業では、代表者が不動産賃貸契約の連帯保証人になっていますので、契約書の再締結というより、連帯保証人の書換が必要です(譲渡後でも譲渡前の代表者がそのまま代表者として残る場合は、書換も必要ありません)。したがって、敷金・保証金が売り手に戻るという概念は発生しないことになります。
M&Aで事業、企業、店舗を譲渡する場合の条件は、譲渡価格だけではありません。
M&Aで譲渡される事業・企業の従業員をどうするのか?これは、譲渡価格以上に重要な問題ですし、質問されることも多い問題です。
M&Aは”交渉”で全てを決めると思ってください。
つまり、譲渡する条件に、価格のだけでなく、従業員の全員を継続して雇用することという条件を譲渡条件に付加するば良いのです。
弊社で扱うM&Aもその殆どは、このような継続雇用の条件が付加されます。
また、キーパーソンがいる場合などは、
買い手企業より、M&A後も継続勤務をしてくれる人材が条件として指定する場合もあります。
M&Aで売却する時に、よくいただく質問の中に、次のようなものがあります。
「現在の取引先との取引はどうなりますか?」
通常、M&Aでは、その売却する事業・企業を包括的に取得することに意義がありますので、M&Aの条件として、現状の取引先がM&Aの後でも、M&A前と同じ条件で取引してくれることが条件となります。
実務的には、M&Aの契約締結後、決済までの間に売主様、買主様がご一緒にご挨拶と説明のために取引先を回り、継続取引のお願いすることになります。
また、我々M&Aアドバイザーの役割として、取引先との契約書がある場合は、
M&Aによる株主の変更、営業主体の変更が契約書に与える影響(チェンジオブコントロール条項)をチェックします。
M&A時に、中小企業で金融機関からの借入がない企業が稀です。
殆どの企業様が金融機関からの借入をお持ちです。
事業譲渡の場合は、通常、金融機関からの借入を引き受けることはないので、ここでは株式譲渡の場合について、触れておきます。
銀行の借入の当事者は、
債権者である銀行<ー>主債務者である対象会社
ということになります。株式譲渡は、会社の株主(通常は、代表者と役員も新株主で専任)が変わるだけですので、債権者と主債務者に移動は起きません。しかしながら、問題は、連帯保証人として、売り手株主=売り手旧代表取締役が連帯保証をしておりますので、M&Aによる株式譲渡に伴い、新株主(或いは新株主・新取締役会が専任する新代表取締役)に連帯保証人の書き換えを行わなければなりません。
ここまでが、理論上のお話です。
実務的には、連帯保証人の書き換え申請が、株式譲渡後になり、時間もかかるなどの理由から、株式譲渡と同時に、新株主側が金融機関に一括返済するというケースが最も多いようです。(弊社の事例でも多いです。)
役員借入とは、会社から見ると、会社役員(中小企業の場合、株主でもあり、代表取締役である社長)からの借入になります。
中小企業の多くは、このような役員による資金の会社への貸付があります。
では、M&Aの時、この役員借入はどうなるでしょうか?
今までの実践で一番多いのは、事業譲渡により、譲渡代金は、会社に入ります。その譲渡代金から返済を受けるというもの。
株式譲渡の場合は、譲渡代金は、株主に入るため、そのままでは、譲渡対象会社への貸付は残ってしまいます。
そこで、
①貸付債権の放棄
②貸付債権の資本への振替(DES)
③貸付債権の債権譲渡(新たな株主側の人か会社への)
のいずれかを選択することになります。
それぞれに、状況に応じた適用、メリット、デメリットがあるため、詳細は、お問い合わせください。
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